コラム2026.08.31執筆:株式会社IROHA HOME

インスペクションは受けるべきか【名古屋】|法律が三か所で聞いてくる理由

「インスペクションって、受けたほうがいいですか」。中古を検討している方から、よくいただく質問です。

答えを先に書くと、受けるかどうかは任意です。ただし法律は、この調査について三か所で扱いを決めています。媒介契約のとき、重要事項説明のとき、契約書を作るとき。三回も出てくるということは、それだけ「見えない部分」が取引の争点になってきたからです。

この記事では、制度がどうなっているかと、受けた場合に何が得られるかを整理します。内見のときに自分で見るポイントは中古マンション内覧チェックポイントに、引渡し後の保証は引渡し後の保証と点検にまとめています。

結論:法律は「あっせん」「実施の有無」「双方の確認」を三段階で書かせる

段階何を書くか根拠
媒介契約のとき建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項宅地建物取引業法 第34条の2第1項第4号
重要事項説明のとき実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要/設計図書・点検記録などの保存の状況同 第35条第1項第6号の2
契約書を作るとき構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項同 第37条第1項第2号の2

※ 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)より

「受けなさい」とは書いていません。書かれているのは、あっせんの有無を示すこと、実施の有無と結果を説明すること、確認した内容を契約書に残すこと。つまり、受けるか受けないかを、買う人が判断できる状態にしなさいという設計です。

建物状況調査とは何を見るものか

条文の定義を読むと、対象がはっきりします。

建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。)

見るのは構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分です。実施するのは、国土交通省令で定める知識と能力を持つ者。

ここで押さえておきたいのは、内装の使い勝手や設備の良し悪しを判定する調査ではないということです。床の傷、壁紙の汚れ、キッチンの古さ。これらは対象ではありません。リノベーションで直す部分より、直さない部分を見る調査だと考えると分かりやすいです。

受けると、保険の道が開く

もう一つの効き目が、既存住宅売買瑕疵保険です。国土交通省の説明では、この保険は中古住宅の検査と保証がセットになった保険で、加入には条件があります。

既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査に合格することが必要です。

つまり、検査を受けて合格しないと、この保険には入れません。逆に言えば、検査を受けることは保険への入口でもあります。

新築住宅には法律で10年間の瑕疵担保責任が義務づけられていますが、中古の売買にはこの義務がありません。制度の違いは引渡し後の保証と点検に書きました。中古では「検査を入れて保険に入る」が、新築の10年保証に相当する位置にあります。

なぜ三か所に分けて書かせるのか

制度の作りを、少し引いて見てみます。

媒介契約のときは、まだ物件を見始めた段階です。ここで聞かれるのは「調査をする人を紹介してほしいか」。受けるかどうかを考える機会を、いちばん早い段階に置いているわけです。

重要事項説明のときは、契約の直前です。ここでは「実施したか」「結果はどうだったか」に加えて、設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況まで説明されます。調査を受けていなくても、図面や点検記録が残っているかどうかは分かるということです。

契約書を作るときは、双方が確認した内容を書面に残します。ここが最後の砦で、「聞いていない」「言った」を後から争わないための記録になります。

この三段階は、買う人が知らないまま契約に進むことを、制度として難しくしていると読めます。逆に言えば、三か所とも空欄・「無」のまま進む取引もあり得るということでもあります。だから、自分で確認する必要があります。

受けるなら、いつ受けるか

順番の問題があります。建物状況調査は、買う前に受けるのが本来です。結果を見てから買うかどうかを決められるからです。

ただし現実には、売主の許可が要ります。まだ人が住んでいる物件では、日程の調整も必要です。だから、買付を入れる前後の、契約までの間に入れることが多くなります。

既存住宅売買瑕疵保険を使いたい場合は、さらに段取りが要ります。保険の加入には検査に合格することが必要で、検査は保険法人の基準に沿ったものになります。建物状況調査を受けたからといって、そのまま保険に入れるとは限りません。保険を使いたいなら、その前提で最初から手配してください。

何が分かって、何が分からないか

正直に書きます。調査で分かることには限りがあります。

分かること:目視・計測でとらえられる範囲の、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の状況

分からないこと:壁の中、床下、天井裏のうち点検口から見えない範囲。共用部の配管の内部。将来の劣化の進み方

つまり、「調査で問題なし」=「解体しても何も出ない」ではありません。当社が解体のときに実際に見つけているものについては現場から:解体して初めて見えることに書いています。

だからといって、受ける意味がないわけではありません。争点になりやすい部分について、契約の前に第三者が見た記録が残る。これが調査の本体です。何かあったときに「知っていたか、知らなかったか」を後から争わずに済みます。

マンションの場合の注意点

マンションの建物状況調査では、専有部分と共用部分のどちらを見るのかを確認してください。構造耐力上主要な部分の多くは共用部にあります。共用部の調査には管理組合の関与が必要になることがあります。

また、配管については、専有部分に係る取替え費用は区分所有者の負担とされています。調査で状態が分かっても、直す費用の負担は別の話です。配管を開けた日に何を決めているかは現場から:配管を開けた日に決めることに書きました。

リノベーション前提だと、見てほしい所が変わる

全面的に内装をやり替える前提なら、調査に期待することは絞られます。

やり替えるので、調べなくてよいもの:壁紙、床の仕上げ、建具、キッチン・浴室・洗面・トイレの設備、照明

やり替えないので、調べておきたいもの:構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分、共用部の配管ルート、サッシ・窓(多くのマンションで共用部にあたり、勝手に替えられません)

この分け方をすると、調査に何を頼むかがはっきりします。「全部見てください」ではなく、「工事で触らない部分を見てください」という頼み方になります。

なお、当社の定額制リノベーションは、水回り4点の交換、壁紙・天井・床の一新、和室の変更、造作カウンターとダイニングテーブル、押入れの収納変更、クローゼットドアの選択が基本内容です。この範囲は全部やり替わるので、調査の対象から外して考えられます。

記録は、あとで効きます

調査を受けても受けなくても、記録が残っているかどうかは物件の価値に効きます。重要事項説明で説明される「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況」は、そのまま次に売るときの材料にもなります。

図面が無い、点検の記録が無い、大規模修繕の履歴が分からない。この状態の物件は、買うときも売るときも、判断に時間がかかります。逆に、調査の記録と工事の記録がそろっている物件は、話が早い。記録を残すことは、住んでいる間だけでなく、手放すときにも効くということです。

工事のときに当社が記録を残している理由も同じです。詳しくは現場から:解体して初めて見えることに書きました。

受けるかどうかの決め方

  • 売主がすでに実施している場合:重要事項説明で結果の概要が説明されます。まずそれを見てから判断してください
  • 築年数が古い、または増改築の履歴が不明な場合:受けておく価値が上がります
  • 既存住宅売買瑕疵保険を使いたい場合:検査に合格することが加入の条件なので、受けることが前提になります
  • リノベーションで全面的に手を入れる場合:内装は全部やり替えるので、調査で見てほしいのは構造と防水に絞られます

費用と手配については、媒介する不動産会社にあっせんを依頼できます。媒介契約書には、あっせんに関する事項を記載することになっています。

よくある質問

Q. インスペクション(建物状況調査)は必ず受けなければいけませんか。

いいえ、実施そのものは義務ではありません。宅地建物取引業法が定めているのは、媒介契約書にあっせんに関する事項を記載すること、重要事項説明で実施しているかどうかと結果の概要を説明すること、契約書に構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載することです。

Q. 建物状況調査では何を見るのですか。

条文では、建物の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の状況の調査で、国土交通省令で定める知識と能力を有する者が実施するもの、とされています。内装の仕上げや設備の良し悪しを判定する調査ではありません。

Q. 調査を受けると、何かメリットがありますか。

既存住宅売買瑕疵保険は、加入するために住宅の基本的な性能について専門の建築士による検査に合格することが必要です。この保険は中古住宅の検査と保証がセットになった保険です。また、契約前に第三者が見た記録が残るため、あとで争点になりにくくなります。

Q. 調査で問題が無ければ、解体しても何も出ませんか。

そうとは限りません。調査の対象は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分で、点検口から見えない範囲までは分かりません。解体して初めて分かることは実際にあります。

Q. マンションでも受けられますか。

受けられますが、専有部分と共用部分のどちらを対象にするのかを先に確認してください。構造耐力上主要な部分の多くは共用部にあり、共用部の調査には管理組合の関与が必要になることがあります。

調査を入れるかどうか、物件ごとに一緒に決めます

「この物件は受けたほうがいいか」は、築年数と、やろうとしている工事の範囲で変わります。全面的にリノベーションするなら、調査で見てほしい部分は絞られます。物件の資料をお持ちいただければ、受ける/受けないの判断材料をご説明します。購入前の中古マンションでも、今お住まいのマンションでも構いません。

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