「冬、リビングが寒い」「窓の結露がひどくて、カーテンにカビが出た」。この二つは、別々の悩みに見えて原因が同じ場所にあります。窓です。
環境省のCOOL CHOICEは、窓の断熱リフォームについて「冬の暖房時の室内の熱の約6割が窓から逃げ、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割が窓から入ってくると言われています」と紹介しています。出典は一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センターの資料です。つまり、壁や天井の断熱を厚くする前に、まず窓を直したほうが体感は変わります。
そして2026年は、窓を直す費用の一部が国から戻ってきます。先進的窓リノベ2026事業です。補助の上限は1戸あたり100万円。工事の内容によっては、窓ひとつで10万円を超える補助が出ます。
ただし、この記事でいちばんお伝えしたいのはそこではありません。マンションにお住まいの方にとって、窓は「自分のもの」ではないという点です。国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)は、第7条第2項第三号で「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」と定めています。工事の前に、管理組合の手続きが要ります。
順に整理します。
先進的窓リノベ2026事業の対象工事は「ガラス交換」「内窓設置」「外窓交換」「ドア交換」です。このうち窓の三つを比べます。
ガラス交換は「既存窓のガラスのみを取り外し、既存サッシをそのまま利用して、複層ガラス等に交換する工事」。サッシはそのまま残ります。
内窓設置は「既存窓の内側に新たに内窓を新設する、または既存の内窓を取り除き新たな内窓に交換する工事」。既存の窓の内側に、もう一枚の窓を足します。
外窓交換(カバー工法)は「既存窓のガラスを取り外し、既存窓枠の上から新たな窓枠を覆い被せて取り付け、複層ガラス等に交換する工事」。窓そのものを新しくします。
補助額は、この工法の違いと、窓の性能区分、窓のサイズの三つで決まります。性能区分は熱の伝わりにくさを示すUw値で分かれ、P(SS)はUw1.1以下、SはUw1.5以下、AはUw1.9以下です。数字が小さいほど熱を通しません。
S区分(Uw1.5以下)の補助額を並べると、次のようになります。
| 工事の種類 | 小(S) | 中(M) | 大(L) | 特大(G) |
|---|---|---|---|---|
| 内窓設置(戸建住宅) | 22,000円 | 34,000円 | 52,000円 | 76,000円 |
| 内窓設置(集合住宅) | 24,000円 | 37,000円 | 57,000円 | 83,000円 |
| ガラス交換(戸建住宅) | 7,000円 | 23,000円 | 35,000円 | 53,000円 |
| ガラス交換(集合住宅) | 8,000円 | 25,000円 | 39,000円 | 59,000円 |
| 外窓交換カバー工法(戸建住宅) | 60,000円 | 92,000円 | 124,000円 | 156,000円 |
| 外窓交換カバー工法(中高層集合住宅) | 62,000円 | 104,000円 | 153,000円 | 202,000円 |
※先進的窓リノベ2026事業の各「対象工事の詳細」ページに記載された1製品あたりの補助額です。P(SS)区分(Uw1.1以下)にはこれより高い額が設定されています。内窓設置とガラス交換では低層集合住宅と中高層集合住宅が同額、外窓交換(カバー工法)では低層集合住宅が戸建住宅と同額で中高層集合住宅だけ別の額です。
ここで一つ、見落とされやすい落とし穴があります。表の「中」「大」というサイズ区分は、工事の種類によって定義が違います。
| 区分 | 内窓設置・外窓交換 | ガラス交換 |
|---|---|---|
| 特大(G) | 4.0㎡以上 | 2.0㎡以上 |
| 大(L) | 2.8㎡以上 4.0㎡未満 | 1.4㎡以上 2.0㎡未満 |
| 中(M) | 1.6㎡以上 2.8㎡未満 | 0.8㎡以上 1.4㎡未満 |
| 小(S) | 0.2㎡以上 1.6㎡未満 | 0.1㎡以上 0.8㎡未満 |
※同事業の各ページに記載されたサイズ区分です。内窓設置と外窓交換は窓の大きさ、ガラス交換はガラスの大きさで判定します。
内窓と外窓交換は「窓」の面積で数え、ガラス交換は「ガラス」の面積で数えます。同じ掃き出し窓でも、内窓なら窓全体で大(L)、ガラス交換ははまっているガラスごとの判定になります。カタログの金額だけを見て工法を決めると、実際の補助額が想定と食い違います。
仮の例で計算します。中高層のマンションで、掃き出し窓(大=2.8㎡以上4.0㎡未満)が2か所、腰窓(中=1.6㎡以上2.8㎡未満)が4か所あり、そこにS区分の内窓を入れる場合です。窓の数と大きさは、例として置いた仮定の条件です。
大の57,000円が2か所、中の37,000円が4か所で、合計262,000円になります。
この事業には下限もあります。申請できるのは「補助額が5万円以上である」ことが条件です。窓ひとつだけの工事では届かないことがあり、その場合は複数の窓をまとめる必要があります。上限は1戸あたり100万円なので、住戸まるごとの窓工事でも収まる範囲です。
工事の時期にも条件があります。対象は「2025年11月28日以降に対象工事に着手したもの」。申請は「申請開始~遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合は当該時点まで)」で、予約申請は2026年11月16日までです。
予算の消化状況は公開されています。事業の予算総額は1,125億円(令和7年度補正予算)で、2026年7月29日0時時点の申請額の割合は14%です。まだ余裕はありますが、この割合は事業のサイトで日々更新されるため、工事を検討する時点でご自身で確認してください。
対象になる住宅は「リフォーム工事の工事請負契約日時点において、建築から1年が経過した住宅または過去に人が居住した住宅」です。中古を買ってリノベーションする場合も、この条件に当てはまります。
なお申請は、工事をした本人ではなく、事務局に登録された事業者が行う仕組みです。事業の説明では「補助対象者に代わり交付申請等の手続きを行い、補助金の交付を受け、交付された補助金を補助対象者に還元するものとして事務局に登録された者」と定義されています。工事を依頼する会社がこの登録をしているかどうかで、使える・使えないが決まります。見積もりを取るときに確認してください。
名古屋市には、住宅等の脱炭素化促進補助という制度があり、その中に断熱窓改修のメニューがあります。補助額は「補助対象経費の3分の1(補助上限額100,000円)」です。
この制度で注意していただきたいのは、単独では使えないことです。対象になるのは「令和8年度に国のリフォーム支援事業における補助金の交付を受ける改修であること」とされています。つまり、先進的窓リノベ2026事業などの国の補助を受けることが前提で、その上に市の補助が乗る形です。工事の種類も「内窓設置、外窓交換又はガラス交換を伴う改修であること」と限定されています。
申請の受付期間は「令和8年7月1日(水曜日)から令和9年2月12日(金曜日)まで(消印有効)」。ただし「各補助区分において申請額が予算額に達し次第、予告なく受付を終了します」とされています。国の事業と市の制度で、締切も予算の消化ペースも別々に動くということです。
補助金全体の地図は名古屋のリノベで使える補助金と税制にまとめました。
国の事業には、先進的窓リノベ2026事業のほかにみらいエコ住宅2026事業があり、そちらのリフォームでも開口部の断熱改修が補助の対象です。ただし、みらいエコ住宅2026事業は「「先進的窓リノベ2026事業」の要件を満たす開口部の設備は、「先進的窓リノベ2026事業」へ交付申請し、補助金の交付を受けることができますが、本事業での補助金の交付を受けることはできません」としています。
同じ窓に二つの事業から補助を受けることはできません。どちらで申請するかは、工事を始める前に決めておく必要があります。
ここが、マンションの断熱リフォームで最初につまずくところです。
国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)は、専有部分の範囲について「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」と定めています。同コメントの第22条関係①は、この規定を受けて「開口部は共用部分として扱うこととなる。」と説明しています。
では誰が直すのか。第22条は「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。」としています。原則は管理組合の計画修繕です。
そのうえで第2項に例外があります。「区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。」。承認を得れば、自分の負担で工事ができるという建て付けです。
そして重要なのが、この枠組みに内窓も含まれていることです。同コメントの第22条関係⑥は、対象となる工事の具体例として「防犯・防音・断熱性等により優れた複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等が考えられる。」と挙げています。
「内窓は室内側に付けるだけだから自由にできる」という説明を見かけますが、標準管理規約はそう作られていません。内窓の増設も、開口部の改良工事の具体例として名指しされています。実際に承認が要るかどうかは各マンションの規約と細則によりますので、工事の前に管理規約を確認し、必要なら理事会へ申請してください。規約の読み方はマンション管理規約でできる工事・できない工事にまとめています。
なお、同コメントの第22条関係④は、この例外規定を置いた理由として「治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ること」を挙げています。結露を理由に断熱を急ぐ必要がある、という事情は、規約を作った側も想定しているということです。
結露は、空気が冷たいものに触れて、含みきれなくなった水蒸気が水に変わる現象です。だから止め方は二つしかありません。触れる面を冷たくしないか、空気中の水蒸気を減らすかです。
断熱リフォームは前者に効きます。内窓を足す、複層ガラスに替える、窓ごと交換する。どれも室内側の表面温度を上げる工事なので、同じ湿度でも結露しにくくなります。
一方で、後者を放置すると結露は完全にはなくなりません。冬に加湿器を使う、洗濯物を室内に干す、鍋物をよくする。こうした暮らし方は室内の水蒸気を増やします。常時換気の設備を止めていたり、給気口が塞がっていたりすると、その水蒸気が室内に留まります。
窓の結露が減った代わりに、家具の裏や押入れの壁など、より冷たい場所で結露が起きることもあります。断熱と換気は、片方だけでは完成しません。窓を直すときに、給気口と換気扇が動いているかを一緒に確認してください。
費用の相場について、リフォーム会社紹介サービスのホームプロは「二重窓・内窓リフォームの費用相場は50万円未満が中心価格帯になります。」と公開しています。同社経由の事例集計であり、窓の数、大きさ、性能によって変わります。
先ほどの例では補助が262,000円でしたから、工事費の相当部分が戻る計算になります。断熱リフォームは、補助の有無で実質負担が大きく動く工事です。
そのうえで、判断していただきたいことがあります。窓だけを単独で直すか、リノベーション全体の中でやるかです。
内装をやり替えるタイミングなら、内窓の設置も外窓交換も、養生や片付けが一度で済みます。カーテンレールや窓まわりの造作を作り直す場合も同時のほうが無駄がありません。逆に、内装には手を入れずに寒さだけを解決したいなら、窓の工事は単独で成立します。数日で終わり、住みながらでもできる工事です。
IROHAHOMEのマンションリノベ定額制は398万円(税抜)、税込437.8万円です。窓は共用部分にあたるため定額制の基本工事とは別の扱いになりますが、内装と一緒に計画すれば、承認の申請と工程を一本にまとめられます。戸建てや部分改修はリノベーション LIVANAで、100万円~600万円、400万円~1,200万円、900万円~2,500万円の三つの価格帯からご相談いただけます。
築年数によって優先順位も変わります。共用の窓サッシが計画修繕でいつ更新される予定かは、長期修繕計画を見れば分かります。数年後に管理組合が全戸のサッシを交換する予定なら、いま自費で外窓交換をする意味は薄くなります。確認の仕方は中古マンションの築年数の見方にまとめました。
工法を先に決めないでください。 ガラス交換・内窓設置・外窓交換で補助額は大きく違い、サイズの数え方も違います。既存サッシの状態、開け閉めの頻度、結露の出方を見てから、どの工法が合うかを決める順序です。
管理規約と細則を先に取り寄せてください。 窓枠と窓ガラスは専有部分に含まれません。承認の要否、申請の様式、理事会の開催頻度によって、着工できる時期が決まります。
補助の締切から逆算してください。 国の事業は予算上限に達した時点で終了し、名古屋市も予算額に達し次第、予告なく受付を終了します。設計と承認に時間がかかる工事ほど、締切ぎりぎりの着手は間に合いません。
Q. 断熱リフォームはどこから手を付けるのが効果的ですか。
窓です。環境省のCOOL CHOICEは「冬の暖房時の室内の熱の約6割が窓から逃げ、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割が窓から入ってくると言われています」と紹介しています。壁や天井の断熱より工事が小さく、住みながらでもできるため、体感の変化を得やすい順序になります。
Q. 2026年の窓の補助金はいくらもらえますか。
先進的窓リノベ2026事業では、1戸あたり100万円が上限です。補助額は工法・性能区分・サイズで決まり、たとえばS区分(Uw1.5以下)の内窓を集合住宅に設置する場合、中サイズで37,000円、大サイズで57,000円です。補助額の合計が5万円以上であることが申請の条件です。
Q. 名古屋市の補助と国の補助は両方使えますか。
名古屋市の断熱窓改修は「補助対象経費の3分の1(補助上限額100,000円)」で、対象は「令和8年度に国のリフォーム支援事業における補助金の交付を受ける改修であること」とされています。国の補助を受けることが前提の上乗せ制度です。一方、国の事業どうしでは、みらいエコ住宅2026事業が先進的窓リノベ2026事業の要件を満たす開口部について「本事業での補助金の交付を受けることはできません」としており、同じ窓での二重取りはできません。
Q. マンションで内窓を付けるのに管理組合の許可は要りますか。
規約によります。国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)では「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」とされ、開口部の改良工事の具体例として「既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等」が挙げられています。第22条第2項は、管理組合がすぐに実施できない場合に、理事長の承認を受けて区分所有者の負担で工事ができると定めています。まず自分のマンションの規約と細則を確認してください。
Q. 内窓を入れれば結露はなくなりますか。
減りますが、なくなるとは限りません。結露は表面温度と室内の水蒸気量の両方で決まるため、断熱で表面温度を上げても、加湿や室内干しで水蒸気が多く、換気が止まっていれば別の冷たい場所で結露します。窓の工事と一緒に、給気口と換気扇が正常に動いているかを確認してください。
断熱リフォームは、「どの窓を、どの工法で、いつ直すか」で費用も補助額も変わる工事です。そして、マンションでは自分だけでは決められない部分があります。
IROHAHOMEは名古屋市内で、中古物件の購入からリノベーションまでを同じチームで担当しています。間取り図と管理規約をお持ちいただければ、寒い部屋の窓がどのサイズ区分に当たるか、どの工法が合うか、承認の手続きが要るかを一緒に整理します。物件を探している段階からのご相談も歓迎です。
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