コラム2026.09.22執筆:株式会社IROHA HOME

空き家の低利融資が国策化へ|個人が今確認したい制度との違い

空き家を直して貸す事業者に、国が低利の資金調達ルートを設ける——そんな新制度の方針が報じられました。時事通信の2026年9月8日報道によると、国土交通省は、空き家をリフォームし、子育て世帯や中低所得者向けの賃貸住宅として提供する事業者に対して、低利で資金を融資する制度を創設します。政府が住宅金融支援機構に拠出する資金の運用益を使い、同機構がリフォーム資金を融資する仕組みです。

先に、誤解しやすい点を切り分けます。これは、空き家を持つ個人が改修費を直接借りられる制度として報じられたものではありません。対象として示されているのは、空き家をリフォームして賃貸住宅として提供する事業者です。また、2027年度予算概算要求に関連費用が盛り込まれた、制度創設を目指す段階です。金利、融資率、募集開始時期、申請方法などの詳細は、今回の出典には書かれていません。今すぐ申請できる制度と受け取らず、詳細は今後公表されるものとして区別する必要があります。

今回の動きが示すのは、空き家対策を除却だけでなく、住まいとして再び使う側からも進めようとしていることです。ただし、所有する空き家をどうするかという個人の判断と、事業者の資金調達を支える新制度は同じ話ではありません。この記事では、報道で確認できる新制度の範囲、空き家を取り巻く実数と規制、個人が現在確認できる既存制度の順に整理します。

報道で分かっていること、まだ分からないこと

項目報道で確認できる内容
融資を受ける主体空き家をリフォームし、対象世帯向けの賃貸住宅として提供する事業者
資金の仕組み政府が住宅金融支援機構に拠出する資金の運用益を活用し、同機構が低利で融資
自治体との関係自治体が進める空き家対策やまちづくりとの連携を重視
対象として示された住宅一般的な空き家に加え、老朽化した公営住宅のリフォーム賃貸活用
予算上の位置づけ2027年度予算概算要求に関連費用
今回の出典にない情報金利、融資率、開始時期、申請方法などの詳細

※ 時事通信の2026年9月8日報道にある制度案の内容。表は記事本文の記載範囲を整理したもので、未公表の条件を補っていません。

報道では、事業者がリフォーム前に空き家を買い取ろうとしても、空き家は資産価値が低く、金融機関に担保として認められにくいため、資金調達が難しいという現状が説明されています。新制度は、この入口に資金を供給し、賃貸住宅としての活用を促す狙いです。

自治体との連携も制度案の中心です。自治体が目指すまちづくりに沿い、子育て世帯向け住宅を提供する事業者へ優先的に融資することなどが想定されています。さらに、一般的な空き家だけでなく、老朽化した公営住宅をリフォームして賃貸住宅として使う場合も、同様の支援対象にする方針が報じられています。

ここから先は、まだ線を引かなければなりません。どの事業者が対象になるのか、どの改修が融資対象になるのか、自治体との連携をどう証明するのかは、今回の出典だけでは分かりません。個別の事業計画に使えるかどうかは、今後公表される詳細を確認してから判断することになります。

背景にある空き家の実数

制度案の背景には、空き家の増加があります。総務省の住宅・土地統計調査の確報では、2023年10月1日現在、国内の空き家は900万2千戸で過去最多、総住宅数に占める空き家率は13.8%で過去最高でした。

指標総務省確報の値
空き家数900万2千戸
空き家率13.8%
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家385万6千戸
空き家数の長期推移1993年から2023年までの30年間で約2倍

※ 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」の確報値(2024年9月25日公表)。調査時点は2023年10月1日です。

ここで、数字の範囲を混ぜないことが大切です。385万6千戸は、空き家全体から賃貸用、売却用、二次的住宅を除いた区分です。一方、30年間で約2倍という長期推移は、空き家全体についての説明です。前者だけが同じ期間に倍増した、という意味ではありません。

統計上の空き家には、賃貸用や売却用として市場に出ている住宅も含まれます。そのため、空き家数のすべてが直ちに改修して貸せる住宅というわけではありません。立地、建物の状態、権利関係、改修後の使い道を一件ずつ確認しなければ、賃貸化できるかは判断できません。新しい融資制度ができても、物件そのものの見極めが不要になるわけではないのです。

空き家は、持っているだけで同じ状態が続くとは限らない

空き家の判断では、資金調達だけでなく、管理の側面も外せません。国土交通省の案内では、空家法は平成26年に制定されました。倒壊の危険性が高いなど、周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家を市区町村が「特定空家」に指定し、指導や勧告などで改善を求める枠組みです。

さらに、令和5年の法改正によって、適切に管理されていない「特定空家」の予備軍も「管理不全空家」として指導などの対象になりました。危険な状態が完成してから対応するだけでなく、その手前の管理状態も行政対応の対象に含まれたという整理です。

税負担にも関係します。一般の住宅の敷地には「住宅用地特例」がありますが、「管理不全空家」や「特定空家」について指導に従わず勧告を受けると、この軽減措置を受けられなくなります。小規模住宅用地は、固定資産税の課税標準が1/6に軽減されます。

一般住宅用地は、固定資産税の課税標準が1/3に軽減される制度です。勧告によって特例を外れる可能性は、売るか、直して使うか、除却するかを考える際の重要な条件になります。

放置による影響は税だけではありません。国土交通省は、倒壊などの安全面、ねずみや害虫の発生といった衛生面、不法侵入などの防犯面で、周囲に悪影響を及ぼすと説明しています。空き家を持つ方にとって、新制度の詳細を待つことと、現在必要な管理まで止めることは別です。現状を確認し、除却するか、活用するか、早めに方向を決める必要があります。国土交通省の言葉でいえば、「しまう」か「活かす」かという選択です。

個人が確認できる既存制度は、別の仕組み

個人が中古住宅を購入してリノベーションしたい場合、新しい事業者向け融資とは別に確認できる制度があります。住宅金融支援機構の【フラット35】地域連携型です。これは、地方公共団体による補助金などの財政的支援と、【フラット35】の金利引下げを組み合わせる制度です。

【フラット35】地域連携型(子育て支援・空き家対策)のメニューでは、借入金利が当初5年間、年▲0.5%となります(子育て支援・空き家対策のみのポイントの適用があった場合の値です)。住宅金融支援機構の試算例では、借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、借入金利年2.50%という条件で、通常の【フラット35】より総返済額が約83万円少なくなると示されています。

確認項目【フラット35】地域連携型(子育て支援・空き家対策)
制度の組み合わせ地方公共団体の財政的支援と住宅金融支援機構の金利引下げ
金利引下げ当初5年間、年▲0.5%(子育て支援・空き家対策のみのポイント適用時)
公式試算の条件借入3,000万円(融資率9割以下)・35年・年2.50%・元利均等返済・ボーナス返済なし
公式試算の差総返済額が約83万円少ない

※ 制度内容と試算条件は住宅金融支援機構の公式ページ。試算結果は概算で、融資手数料、物件検査手数料、火災保険料などは含まれません。

ただし、どこでも同じように使えるわけではありません。住宅金融支援機構と地方公共団体の双方に予算枠があり、予算金額に達すると受付が締め切られる場合があります。取扱金融機関または住宅金融支援機構の審査によって、希望どおりにならない場合があることも公式ページに明記されています。

愛知県や名古屋市で使えるかは、この記事では断定しません。手元の自治体一覧ページは、都道府県を選ぶと各地方公共団体の情報を確認できる構成ですが、今回保存された本文には個別の自治体名が含まれていないためです。検討時点で住宅金融支援機構の連携自治体一覧を開き、対象自治体、使えるメニュー、自治体側の財政支援、受付状況を確認してください。

中古マンションの購入全体を先に整理したい方ははじめての中古マンション購入、工事費の見方は中古マンションリノベの費用相場、工事期間と順序はリノベーションの期間と流れもあわせて確認できます。補助制度を探すときの注意点はリフォーム補助金の確認方法に分けています。

立場別に、いま整理したいこと

実家や持ち家が空き家になっている方

最初に必要なのは、新しい融資を待つことではなく、建物の状態と管理状況を把握することです。周囲への安全・衛生・防犯上の影響が出ていないかを確認し、除却、売却、賃貸などの方向を比べます。新制度の対象として報じられたのは事業者なので、所有者本人が直接借りられる前提で改修計画を組むことはできません。

一方で、事業者による買取りや賃貸活用の選択肢が今後広がる可能性はあります。ただし、これは制度案から考えられる方向性であり、個別物件の買取りや融資を保証するものではありません。物件の状態や立地を見たうえで、売却と活用のどちらが現実的かを比較することが先です。

中古住宅を買ってリノベーションしたい方

新制度ではなく、既存の【フラット35】地域連携型が検討対象になり得ます。ただし、自治体の財政支援とセットであり、予算枠と受付状況があります。物件を決めてから制度名を知るのではなく、購入候補の自治体が連携対象か、どの支援が要件かを先に公式一覧で確認する順番が安全です。

また、金利引下げだけで工事費全体を判断しないことも大切です。購入費、改修費、手数料、保険料などは別々に確認し、制度を使える場合と使えない場合の両方で資金計画を組みます。公式試算は条件を固定した比較であり、自分の借入条件そのものではありません。

空き家を改修して貸す事業を考える方

今回報じられた新制度に最も近いのはこの立場です。それでも、現時点では金利や融資条件、募集時期などが出典にありません。自治体との連携を重視し、子育て世帯や中低所得者向けの賃貸住宅を提供する事業者を支援するという方向は確認できますが、採算計画へ具体的な借入条件を入れる段階ではありません。

候補物件の取得価格、改修範囲、賃貸後の用途、自治体の空き家対策との整合を先に整理し、制度の詳細が出た時点で適合性を照合できる形にしておくことが現実的です。制度が事業を成立させるのではなく、成立可能な計画に利用できる資金調達手段が加わるかを確認する、という順番になります。

制度名より先に、物件と目的を分けて考える

空き家をめぐる制度は、所有者、購入者、事業者で入口が変わります。所有する空き家の管理に困っているのか、中古住宅を買って住みたいのか、空き家を取得して賃貸事業にしたいのか。目的が違えば、確認する制度も相談先も異なります。

今回の報道は、空き家の賃貸活用に資金面から新しい道を設ける方針を示しました。一方、個人向けの直接融資として条件が公表されたわけではありません。報道段階の制度と、現在案内されている【フラット35】地域連携型を混ぜず、自分がどの立場なのかを起点に判断してください。

よくある質問

Q. 新しい空き家向け低利融資はいつから始まりますか。

今回の出典では、2027年度予算概算要求に関連費用を盛り込んだことまでが報じられています。開始時期、募集時期、申請方法は書かれていません。制度創設を目指す報道段階であり、詳細は今後公表されるものとして確認してください。

Q. 空き家を持つ個人が、新制度から直接借りられますか。

今回報じられた対象は、空き家をリフォームし、子育て世帯や中低所得者向けの賃貸住宅として提供する事業者です。個人所有者が直接借りる制度としては報じられていません。個人が中古住宅を取得する場合は、別制度である【フラット35】地域連携型などを確認します。

Q. 名古屋市で【フラット35】地域連携型を使えますか。

この記事のローカル出典では、愛知県や名古屋市が対象かを確定できません。住宅金融支援機構の公式一覧で都道府県を選び、対象の地方公共団体、利用できるメニュー、自治体側の受付状況を確認してください。地方公共団体と住宅金融支援機構の双方に予算枠があります。

Q. 空き家を放置するとどうなりますか。

安全、衛生、防犯の面で周囲へ悪影響を及ぼす可能性があります。また、「管理不全空家」や「特定空家」への指導に従わず勧告を受けると、「住宅用地特例」を受けられなくなります。状態を確認し、管理、活用、除却などの対応を早めに検討することが大切です。

Q. 国内の空き家は実際にどれくらいありますか。

総務省の確報では、2023年10月1日現在、空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%で過去最高でした。空き家のうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く区分は385万6千戸です。

空き家の選択肢を、物件ごとに整理します

空き家を売るのか、直して使うのか、購入してリノベーションするのか。判断に必要な資料と条件は物件ごとに違います。空き家の売却・活用・リノベーションを整理したい方は、IROHA HOMEへご相談ください。新制度が使えると決めつけず、現在の建物の状態、希望する使い方、確認できる制度を分けて、一緒に判断材料を整えます。

無料で相談する
← コラム一覧へ戻る