スタッフ2026.07.17執筆:株式会社IROHA HOME

設計より:家事動線は、歩数より順番で考える

「家事動線を短くしたい」とご相談を受けると、私たちはキッチンと洗面所の距離だけを測るのではなく、家事の最初から最後までを聞きます。

洗濯なら、脱いだ服を集める、洗う、取り出す、干す、畳む、しまう。買い物なら、玄関から運ぶ、袋を置く、冷蔵品と日用品を分ける、収納へ戻す。距離が短くても、途中に置き場所がない、扉がぶつかる、家族とすれ違えないと、小さな手間が残ります。

だから私たちは、歩数の短さより先に、家事がどんな順番で進むかを図面に書き込みます。

「行く・戻る」だけでは見えない動きがあります

動線図では、人が移動する線を描きます。でも実際の家事では、人だけが移動しているわけではありません。

  • 洗濯かご、濡れた衣類、ハンガー
  • 買い物袋、冷蔵品、段ボール
  • 食器、料理、ごみ、ふきん
  • 掃除機、替えのシート、洗剤
  • 通勤かばん、上着、郵便物

何を持って、どこへ置き、次に何をして、最後にどこへ戻すか。これを一つずつ追うと、必要なのは通路の短さだけではなく、扉の向き、作業台、コンセント、収納の深さ、家族と重ならない幅だと分かります。

家事を「一連の場面」に分けて聞きます

総務省統計局の令和3年社会生活基本調査では、家事時間を「食事の管理」「住まいの手入れ・整理」「衣類等の手入れ」などに分けています。間取りの打合せでも、「家事」という大きな言葉のままにせず、場面へ分けると具体的になります。

場面順番として聞くこと
洗濯脱ぐ→集める→洗う→干す→畳む→しまう
買い物帰宅→仮置き→分ける→冷蔵庫・収納へしまう
料理出す→洗う→切る→加熱→盛る→配膳→片付ける
掃除道具を出す→使う→ごみを捨てる→充電・収納する
帰宅靴→上着→手洗い→荷物→郵便物→着替え

順番はご家庭によって変わります。部屋干しが中心か、浴室乾燥機か、バルコニーか。食品を週末にまとめて買うか、毎日少しずつ買うか。同じ間取りでも必要な置き場は違います。

洗濯は「干す場所」より、前後をつなぎます

洗濯機の隣に物干しがあれば移動は短くなります。それでも、家族の衣類をどこで集めるのか、ハンガーをどこから出すのか、乾いた服をどこへ戻すのかが離れていれば、往復は残ります。

私たちは、洗濯機、物干し、作業台、タオル収納、各自のクローゼットを一続きで見ます。すべてを一部屋へ集める案もあれば、家族ごとにしまう場所を分ける案もあります。大切なのは、人気の間取りをそのまま採用することではなく、普段の順番に合うことです。

料理は、冷蔵庫までの距離だけでは決まりません

キッチンでは、冷蔵庫、シンク、加熱機器の位置に加えて、買い物袋の仮置き、食器の取り出し、配膳、ごみの分別まで追います。

二人で料理するなら、最短距離でも動線が重なると使いにくいことがあります。反対に少し距離があっても、冷蔵庫を開ける人と加熱する人がぶつからず、配膳する場所が空いていれば進めやすい場合があります。

水まわりの位置を動かせる条件はマンションでキッチン・浴室・トイレを移動できる条件で整理しています。配管条件と日々の順番を同時に確認します。

収納は「量」より、戻す直前に置きます

収納を大きくしても、使う場所から遠いと、仮置きが増えます。掃除用品は掃除を始める場所か、終えて戻りやすい場所へ。タオルは洗面室で使う分とキッチンで使う分を、同じ収納へ集めない方が楽なこともあります。

詳しくは設計より:収納は量より、使う場所から決めるで書きました。動線と収納は別々の話ではなく、「出す→使う→戻す」の両端です。

回遊動線が正解とは限りません

行き止まりがなく二方向へ抜けられる回遊動線は、家族がすれ違いやすく、複数の場所へ行きやすい場合があります。一方で、通路が増える分だけ壁面収納が減る、扉が増える、家具を置きにくくなることもあります。

高齢者住宅協会の住まいの改修ガイドライン紹介でも、生活動線・家事動線を長くしすぎず、収納場所も含めて考える視点が示されています。

大切なのは「回れること」ではなく、よく行う一連の動作が止まりにくいことです。通り抜けが必要な場所と、収納や作業面を優先する場所を分けます。

図面には、朝と夜の動きを重ねます

間取りの打合せでは、平日の朝、帰宅後、就寝前、休日のまとめ家事を別々に聞きます。朝は洗面、着替え、朝食、身支度が重なります。夜は料理、洗濯、入浴、片付けが同時に進みます。

家具や家電の位置も先に入れます。コンセントを後から考えると延長コードや置き場の制約が生まれやすいため、設計より:コンセントは、家具を置いてから考えるの順で確認します。

私たちが知りたいのは、きれいに説明された理想の一日ではありません。「帰ったら荷物をダイニングへ置いてしまう」「乾いた服は数日かごに残る」といった実際の動きです。そこに、間取りを整える手がかりがあります。

いつもの家事を、そのまま教えてください

朝起きてから出かけるまで、帰宅してから眠るまでを、きれいに整理せず箇条書きでお送りください。洗濯物、買い物袋、配膳、掃除道具がどこからどこへ動くかを図面へ重ね、移動距離だけでなく、仮置き・扉・収納・家族の重なりまで一緒に整理します。

無料で相談する
← コラム一覧へ戻る