二世帯リノベで先に決めること【名古屋】|登記のかたちが相続と資金を変える
二世帯の相談は、たいてい「玄関を分けるか」から始まります。ところが実務でいちばん後戻りが効かないのは、玄関でも水まわりでもなく、建物をどう登記して誰の名義にするかです。
理由は相続にあります。国税庁は小規模宅地等の特例で、被相続人の居住用の宅地について330㎡まで評価額を80%減額できると定めています。ところがこの特例で「一棟の建物に居住していた親族」と認められる範囲は、その建物が区分所有建物として登記されているかどうかで変わります。登記のかたちひとつで、同じ間取り・同じ暮らし方でも結論が変わるということです。
名古屋で二世帯を考える人は増えています。名古屋市の令和5年住宅・土地統計調査によると、65歳以上の世帯員がいる世帯は393,100世帯、主世帯総数1,128,700世帯に占める割合は34.8%です。30年前の平成5年は22.7%でしたから、12.1ポイント上がっています。
この記事では、二世帯リノベを間取りではなく「登記・相続・資金・介護」の順で整理します。設計の話はそのあとでも間に合います。
結論:区分所有の登記をするかどうかを先に決める
二世帯住宅の登記には、大きく分けて次のかたちがあります。
| 登記のかたち | 内容 |
|---|---|
| 単独登記 | 建物全体を一人の名義で登記する |
| 共有登記 | 建物全体を親と子の共有名義で登記する(持分を定める) |
| 区分登記 | 親世帯部分と子世帯部分を別々の建物として登記する |
※不動産登記の一般的な区分です。どの登記ができるかは建物の構造によって決まるため、設計段階で司法書士・登記の専門家に確認してください。
このうち区分登記は、相続税の小規模宅地等の特例の扱いに影響します。国税庁の説明では、特例の対象になる「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族」の意味が、次のように分かれています。
「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」である場合 被相続人の居住の用に供されていた部分」
そして同じページの注釈で、その「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」とは「区分所有建物である旨の登記がされている建物をいいます。」と定義されています。
つまり、区分登記をしていると「一棟の建物に居住していた親族」の範囲が、親が住んでいた部分に限られます。区分登記をしていなければ「被相続人または被相続人の親族の居住の用に供されていた部分」まで広がります。同じ建物に一緒に住んでいても、登記の状態で判定が変わるということです。
小規模宅地等の特例の減額は、特定居住用宅地等で限度面積330㎡・減額割合80%です。土地の評価額が大きいほど、この差はそのまま税額に出ます。
なお、実際に特例を使えるかどうかは、取得者ごとの要件(申告期限まで居住し続けること、その宅地を保有し続けることなど)を満たすかで決まります。判断は税務署または税理士に確認してください。ここでお伝えしたいのは、「設計を決める前に登記の方針を決めておかないと、あとから直せない」という順序の話です。
距離感の三つの型と、費用の関係
登記の方針が決まったら、暮らし方の型を選びます。
完全分離型は、玄関・キッチン・浴室・洗面・トイレをすべて二組つくる形です。設備が二組になるぶん工事費は最も大きくなります。区分登記ができる可能性があるのもこの型です。
一部共有型は、玄関や浴室など一部だけを共有する形です。よくあるのはキッチンだけを二つにして、浴室と玄関は一つにする組み合わせです。設備の数が減るぶん費用は下がります。
同居型は、水まわりを共有して居室だけを分ける形です。工事の中心は間仕切りと収納になるため、三つの中では最も費用が小さくなります。
費用の差は、ほぼ「水まわりが何組になるか」で決まります。キッチン・浴室・洗面・トイレを二組つくれば、その分がそのまま増えます。水まわりの部位別の費用感は水まわりリフォームの基本に整理しました。
IROHAHOMEのLIVANAでは、ご予算の目安として100万円~600万円、400万円~1,200万円、900万円~2,500万円の三つの帯を公表しています。同居型で間仕切りと収納を中心にするなら下の帯から、完全分離で水まわりを二組にするなら上の帯が目安になります。マンションを一戸まるごと作り直す定額制は税抜398万円・税込437.8万円です。
親からの資金援助には、非課税の枠がある
二世帯リノベの資金は、親からの援助が入ることが多い工事です。ここには贈与税の非課税制度があります。
国税庁の説明では、直系尊属(父母や祖父母)から住宅の新築・取得・増改築等のための資金を受け取った場合、一定の要件を満たすと非課税限度額まで贈与税がかかりません。限度額は「贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。」と定められています。対象期間は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与です。
増改築等でこの制度を使う場合、次の要件が示されています。
- 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
- その家屋の床面積の半分以上が、贈与を受けた人の居住用であること
- 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること
- 工事費用の半分以上が、贈与を受けた人の居住用部分の工事であること
ここに二世帯特有の注意点があります。「贈与を受けた人の居住用部分」が判定の単位だということです。親から子へ資金を贈り、その資金で親世帯部分だけを直した場合、子の居住用部分の工事とは言えません。どちらの部分の工事にいくら使うかを、見積書の段階で分けておく必要があります。
ローンの選択肢も一つ紹介します。住宅金融支援機構のフラット35には親子リレー返済があります。「親子リレー返済とは、お申込みご本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく制度です。」と説明されており、後継者の要件を満たせば申込本人が満70歳以上でも申し込めます。後継者は申込本人の直系卑属またはその配偶者で定期的収入のある方、申込時の年齢が満70歳未満の方、連帯債務者になる方(1名のみ)とされています。借入期間は後継者の年齢をもとに選べます。
親の年齢を理由に借入期間が短くなる、という制約を外せる制度です。資金計画の考え方は住宅ローン審査に通るためにも合わせてご覧ください。
介護に備える工事には、名古屋市の制度がある
二世帯にする理由が親の介護であるケースは多く、その場合は介護保険の住宅改修費が使えます。名古屋市の説明では、在宅の要介護・要支援者が現に居住する住宅について手すりの取り付けや床材の変更などの小規模な改修を行ったとき、費用の9割・8割または7割が支給されます。
利用限度額は「要支援・要介護度に関係なく、居住する住居に対し、要介護・要支援者の方一人あたり20万円まで」で、支給額は最大18万円(1割負担者)、16万円(2割負担者)、14万円(3割負担者)です。
手続きで最も間違えやすいのは順序です。名古屋市は「改修工事に着工する前に、区役所または支所へ事前申請が必要となります」と明記しています。工事を先にしてしまうと支給されません。事前申請の承認通知が届いてから着工し、完了後に支給申請を行う流れです。
二世帯で特に見落とされるのが、提出書類の一つです。名古屋市が挙げる事前申請の書類には「住宅の所有者の承諾書(改修する住宅の所有者が被保険者本人以外の場合)」が含まれています。親名義の家を子が直す場合、あるいは子名義の家に親が住んでいる場合、この承諾書が要ります。登記の名義をどうするかは、こんなところにも効いてきます。
二世帯を決める前に確認したい三つのこと
将来、どちらかの世帯が空いたときをまず考えてください。 名古屋市の令和5年住宅・土地統計調査では、65歳以上の単身世帯は144,800世帯で主世帯総数の12.8%、65歳以上の夫婦世帯は109,800世帯で9.7%です。高齢者のいる世帯の持ち家は263,400世帯、借家は129,600世帯で、持ち家の割合は67.0%です。二世帯の家は、いずれ一世帯分が空きます。そのとき貸せるのか、売れるのか、住み継げるのかで、完全分離にする価値が変わります。
音は間取りより配置で決まります。 上下に分ける場合、親世帯の寝室の真上に子世帯のリビングや水まわりを置かない、という配置の判断が効きます。床の遮音仕様を上げるより、部屋の位置を入れ替えるほうが安く確実です。マンションで二世帯にする場合の制約はマンション管理規約でできる工事・できない工事にまとめました。
設備は二組にすると、維持費も二組になります。 給湯器もエアコンも、二組あれば交換時期が二回来ます。初期費用だけでなく、十数年後の交換費用まで含めて完全分離にするかを決めてください。築年数別にどこへ費用がかかるかは中古マンションの築年数の見方で扱っています。
よくある質問
Q. 二世帯住宅は区分登記したほうが得ですか。
一概には言えません。国税庁の小規模宅地等の特例では、区分所有建物である旨の登記がされている建物の場合、「一棟の建物に居住していた親族」として扱われる範囲が被相続人の居住していた部分に限られます。区分登記でない場合は被相続人またはその親族の居住していた部分まで含まれます。特定居住用宅地等の限度面積は330㎡、減額割合は80%です。土地の評価額と家族構成で結論が変わるため、設計を決める前に税務署または税理士へ相談してください。
Q. 親からリノベ資金をもらうと贈与税がかかりますか。
一定の要件を満たせば非課税の枠があります。国税庁の住宅取得等資金の贈与の非課税では、省エネ等住宅で1,000万円まで、それ以外の住宅で500万円までが非課税です。増改築等の場合は、工事費用が100万円以上であること、増改築等後の床面積が40㎡以上240㎡以下であることなどの要件があります。対象は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与です。
Q. 親が高齢でも住宅ローンを組めますか。
フラット35の親子リレー返済という方法があります。後継者の要件(申込本人の直系卑属またはその配偶者で定期的収入のある方、申込時の年齢が満70歳未満、連帯債務者になる方1名のみ)を満たす場合、申込本人が満70歳以上でも申し込めます。借入期間は後継者の年齢をもとに選べます。
Q. 手すりや段差解消の工事に補助はありますか。
名古屋市の介護保険住宅改修費が使えます。利用限度額は要介護・要支援者一人あたり20万円までで、費用の9割・8割または7割が支給され、支給額は最大18万円・16万円・14万円です。改修工事に着工する前の事前申請が必須です。改修する住宅の所有者が本人以外の場合は、所有者の承諾書が必要になります。
Q. 完全分離と一部共有では、費用はどのくらい違いますか。
差の大半は水まわりの数です。キッチン・浴室・洗面・トイレを二組つくるか、一部を共有するかで金額が決まります。IROHAHOMEのLIVANAでは、ご予算の目安として100万円~600万円、400万円~1,200万円、900万円~2,500万円の三つの帯を公表しています。同居型なら下の帯、完全分離なら上の帯が目安です。実際の金額は建物の構造と配管の経路で変わるため、図面を見て個別に計算します。
登記・資金・工事を、同じ順番で一緒に整理します
二世帯リノベは、設計だけを先に進めると後戻りが発生します。登記の方針、資金の出どころ、介護の制度、そのうえで間取り。この順序で決めると、あとから直す工事が減ります。
IROHAHOMEは名古屋市内で、中古物件の購入からリノベーションまでを同じチームで担当しています。ご家族の状況と建物の図面をお持ちいただければ、どの型が現実的か、どの制度が使えそうかを一緒に整理します。税務や登記の判断が必要な部分は、専門家への確認事項として明確にしてお渡しします。
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